友人のゲーム

 

最近、友人がゲームを2つ作ったので、やってみました。

 

其の1)『脱獄!モンスター工場』

App Store版

 

GooglePlay版

 

其の2)『無限勇者VSいきなり魔王』

App Store版

 

GooglePlay版

 

 

脱獄!モンスター工場』は去年11月リリース、『無限勇者VSいきなり魔王』は今年2月リリースです。

 

ぼくは、小中時代はたくさんゲーム(主にRPG)をやりましたが、以降はほとんどやらず、せいぜいネットでプレイ動画を観るくらいでした。それだって最後に観たのは2年くらい前なので、人生の大半はゲームと縁遠い生活を送ってきていると言えます。

 

そういうこともあり、たとえ友人が作ったとはいえ、最初はなかなか手をつけられずにいたのですが(そもそもゲームアプリをインストールするのに抵抗があった)、ようやく年末になって『脱獄!モンスター工場』をプレイしてみました。

 

おもしろい。そして勉強になったことがありました。

本作は、モンスターを仕分け金を稼ぐ「カジュアルゲーム」、稼いだ金で情報を集める「アドベンチャーゲーム」、脱獄のためのアイテムを作る「植物育成」、そして脱獄するときの「RPGバトル」と、4つの要素が融合した「痛快ファンタジー脱獄ゲーム」です(詳しくは、App Storeのページへ)。

 

なにが勉強になったかというと、まさにこの、色々な要素を融合して1つのゲームに込める、という作品の作りです。前にも書いたことがありますが、『推しの子』にぼくが衝撃を受けたのは、「アイドル育成もの」と「転生もの」と「推理もの」という、それぞれ単体でも作品を駆動するだけの力ある3つの要素が、たった1つの作品に詰め込まれていたからです。おそらく今後はこういう作りの作品がエンタメ界の主流になっていくだろうと思ったものですが、『脱獄!モンスター工場』をプレイして、すでにそういう時代は来ているのだと感じました。いや、ぼくが知らないだけで、もうとっくにそれが主流になっていたのかもしれません。

 

次に『無限勇者VSいきなり魔王』ですが、これもおもしろかったです。

勇者がいきなりラスボスと戦うクライマックスから始まるゲームで、30分でもクリアできるよう設計されています。

 

で、なにがおもしろいかというと、勇者が何度負けても這い上がり、魔王に挑みつづける点です。最初は歯が立たないのですが、負けることでデータを収集し、やがて魔王を凌ぐ力を身につけていきます。そして懲りずに挑んでくる勇者に、さすがの魔王も狼狽しはじめるのです。負けても挑みつづけるという思想(これは「思想」と呼んでいいと思います)が開発者の人柄を偲ばせる点も個人的に感慨深く、ぼく自身、大いに勇気づけられました。

 

このゲームでは勇者を徹底的に強化することが可能で、プレイすればするほど、すなわち、負ければ負けるほど、大きな力を得ることができます。普通のゲームなら敵に勝つことでレベルアップしますが、このゲームでは敵に負けることでレベルアップします。この逆転の発想がいい。

 

たとえばFF5には、逃げることで威力が増す「チキンナイフ」という武器がありました。宮沢賢治『どんぐりと山猫』には、「このなかでいちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらい」という台詞がありました。卑怯者(チキン)が強く、愚者(ばか)こそ偉い。怯懦と勇敢、愚昧と賢明、といった二項対立に暗黙裡に構築されているヒエラルキーを突き崩し、攪乱し、そして均(なら)す思想です。敗者だからこそ勝者となる『無限勇者VSいきなり魔王』もまた、こういう思想の系列に連なっているのだとぼくは思います。